レジリエンス社会の実現に向けた、本コンソーシアムの取り組みを発信するため、レジリエンス研究教育推進コンソーシアム第1回シンポジウム「安全・安心を創る~レジリエンス研究教育推進コンソーシアムが目指すもの~」を、2018年12月14日に東京茗荷谷の嘉ノ雅 茗渓館(旧茗渓会館)に於いて筑波大学共催にて開催いたしました。エネルギー・資源学会をはじめ、日本エネルギー学会、日本災害情報学会、情報処理学会、日本航空宇宙学会など、19の学会・団体・企業にご後援を頂きました。シンポジウムでは筆者もコンソーシアム参画機関の一員として総合司会を担当しました。以下当日の様子を紹介します。
当日は80名を超す参加者にお集まり頂き、レジリエンス社会への関心の高さを大いに感じました。シンポジウムは2部構成で、第1部は3件の講演があり、コーヒーブレイクを挟んだ第2部ではパネルディスカッションが催されました。
コンソーシアム副会長の、清水 諭 筑波大学副学長(教育担当)・理事による開会挨拶の後、第1部「自然・人間社会・サイバー空間に存在するリスクとレジリエンス」を開始しました。まず、コンソーシアム会長、防災科学技術研究所理事長、林 春男 氏に「自然災害のリスクに対するレジリエンスの向上」の題目でご講演頂きました(図1)。従来の防災モデル、すなわち自然現象としての災害に対する防災モデルは、脆弱性の克服による被害軽減を終始するものでありましたが、レジリエンスの向上には、リスクを理解し、それに適切に対応する、総合的な取り組みが必要であり、それには「予測力」・「予防力」・「対応力」の向上が重要であるとのことでした。
続いて、コンソーシアム副会長、セコム株式会社IS研究所リスクマネジメントグループリーダー、甘利康文 氏に、「日本で起こる事件・事故に深く関わる『世間』という構造」のご講演を頂きました(図2)。「世間学」の定説や『世間』の特質に触れながら「世間学」の視座から見た組織内不正・自己抑制手法について述べられ、レジリエンス社会の実現に向けた共通認識の重要性を改めて認識させられました。
図1 講演1:林 春男 氏(防災科学技術研究所)
第1部の最後に、筑波大学システム情報系准教授、面 和成 氏に「情報通信技術(ICT)の進化とサイバーリスク」の講演を頂きました(図3)。サイバーリスクというと仮想通貨流出事件が記憶に新しいですが、近年では、エネルギーインフラや交通システムなどにおいてIoT (Internet of Things) 機器の普及拡大に伴い、Society5.0で描かれているようにサイバー空間とフィジカル空間との融合が進んできており、サイバーリスクを知ることの重要性が高まってきていると述べられ、サイバーレジリエンス研究をとりまく状況についてご紹介頂きました。
第1部終了後のコーヒーブレイクには、コンソーシアム参画機関のポスターやパンフレットの展示や、総合ブースも用意され、参加者へ取り組みの紹介がなされました(図4)。
第2部では「レジリエンス社会の実現に貢献する人材育成」と題して、パネルディスカッションが行われました。コンソーシアム参画機関より以下の方々にパネリストとして登壇頂きました(登壇順)。
目﨑祐史 氏(セコム IS研究所 所長)
谷 幹也 氏(日本電気 セキュリティ研究所 所長)
長瀬貫窿 氏(DRIジャパン 理事長)
永井正夫 氏(日本自動車研究所 所長)
中島徳顕 氏(電子航法研究所 航空交通管理領域長)
林 春男 氏(コンソーシアム会長、防災科学技術研究所 理事長)
清水 諭 氏(コンソーシアム副会長、筑波大学 副学長(教育担当)・理事)
冒頭、モデレータを務める筑波大学システム情報系教授・リスク工学専攻長、遠藤靖典 氏による「コンソーシアムが推進する大学院教育~協働大学院方式による新たな学位プログラム~」の講演があり、コンソーシアム設立経緯や概要、協働大学院方式による学位プログラムによる教育推進準備状況などが紹介されました(図5)。
続いて登壇頂いたコンソーシアム参画機関のパネラーの方々により「いまリスク・レジリエンス分野で求められている人材とは」、「協働大学院方式による学位プログラムに期待すること」などのテーマでパネルディスカッションが進められました(図6)。会場の参加者からも熱心な質問があったなど、予定の時間では議論が尽くせないほど盛況なものとなりました。
最後に、日本電気株式会社 セキュリティ研究所 所長の谷 幹也 氏より閉会の挨拶を頂き、第1回シンポジウムを終了しました。
本シンポジウムサブタイトルに「~コンソーシアムが目指すもの~」とあったように、第1部の3件の講演、第2部のパネルディスカッションを通しコンソーシアムの意義、レジリエンス社会の実現を目指すための活動の方向性についての議論がなされ、1回目のキックオフシンポジウムとして大変有意義なものになりました。シンポジウム終了後は本館1階カフェスペースにおいて情報交換会が開催され、カジュアルな雰囲気の下、参加者それぞれがリスク・レジリエンスに対する考えについて相互に議論を交わすなどし、これまたとても有意義な場でありました。
(岡島敬一「レジリエンス研究教育推進コンソーシアム第1回シンポジウム」『エネルギー・資源』Vol.40 No.2 (2019)より内容転載)